日本PMO協会

プロジェクトマネジメント経験者に訊く

PMP®️、MBA、事業家で格闘技チャンピオン。

異色の経歴で結果を出し続ける井上氏のプロジェクトマネジメント思想に迫る。

 

日本PMO協会では、日本におけるPMおよびPMOの普及を目指しております。

今回はPMP®️であり、MBAであり、事業家であり、格闘技チャンピオンとして活躍されている井上氏に、仕事とプライベートでのプロジェクトマネジメント感についてお話しを伺いました。

 

皆様のキャリアアップ、スキルアップ、プライベート活動で活かしていただけますと幸いです。

 


プロフィール: 井上 裕介 氏

IT、マーケティング等のプロジェクトマネジメントを歴任。事業化、プロジェクトマネジメントの国際資格であるPMP®有資格者、経営管理修士(MBA)、格闘技チャンピオンとして多方面に活躍している。

 


現在までのキャリアパス

日本PMO協会:

本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます。早速ですが、井上さんの経歴などを教えていただけますでしょうか。

 

井上氏:

私は学生起業をした経歴がありまして、大学4年生の時にパートナーと起業して10年間音楽の会社を経営していました。

その後、青山学院大学大学院に通いMBAとなりました。その大学院でプロジェクトマネジメントの授業を受け、PMP®となりました。先日、資格を更新し、今でもPMP®です。

2015年から株式会社ウフルでデジタルマーケティングを専業として活動していました。

そこでSalesforce.comの導入支援や広告、データマーケティングなどをおこなっていました。

2017年からウェブメディアの会社に入り、AIとかIoTなどのウェブサービス全般のアカウントマネジメントとプロジェクトマネジメントの両方をやっています。新規事業系の案件が多いですね。

昨年(2018年)の8月から、最近流行りの「パラレルワーカー」になりました。パラレルワーカーは、会社に在籍しながら自分でも事業を始めるというワークスタイルです。

自分の事業は主にコンサルティングをやっています。

デジタルマーケティング、事業開発などのコンサルティングで、ビジネスアナリシスやプロジェクトマネジメントなどを複数のお客様に提供しています。

 

日本PMO協会:

色々なご経験がおありなのですね。ちなみに、プロジェクトマネジメントを学ぼうと思ったきっかけは何だったのですか?

 

井上氏:

音楽時代の話ですが、アーティストを見つけて、育成して、レコーディングして、ツアーをまわって、ツアーファイナルをやる、というのが事業のひとつの流れになるのですが、これがひとつのフェーズになり、終わるとまた新しいアルバムのフェーズが始まるみたいな状況でした。これらは発売日、ツアーファイナルの日程などの納期が存在し、全てが「有期的」で、それぞれの期限も基本的に変更する事ができない。音楽業界やっていた事は、まさしくプロジェクトマネジメントでした。ただ、その時は何となく勘でやっていたので、それを体系的に学んだら面白そうだという事が、プロジェクトマネジメントに興味を持った理由です。

 

日本PMO協会:

そういう経緯があったのですね。それでPMBOK®を学ばれ、PMP®を取得されたのですね。プロジェクトマネジメントを学ばれ、資格を取得された事はその後のお仕事にも生かされましたでしょうか?

 

井上氏:

プロジェクトマネジメントの知識体系や資格は、日本全体としては認知がまだまだ低い状況ですが、プロジェクトマネジメントは学問として非常に優れていると思います。ビジネスの本質を体系化できていて、仕事としてのプロジェクトマネジメントとしてはもちろんですが、ビジネスの組み立て方としてのフレームワークとしても生かすことが出来るので、私は大いに活用しています。

 

「目標」や「計画」の考え方

日本PMO協会:

井上さんの経歴をお聞きすると、様々な活動を積極的に行い、それを通じて様々なご経験や実績を残されていますが、どういう風に「新しいことをしよう!」とか「新しい目標を設定しよう!」とかを決めているのでしょうか?

とても興味があります。

 

井上氏:

私は多動性な部分があり、そもそも色々なことを同時にやるのが好きだというのがあります。後は、プロジェクトマネジメントの文脈で言うと、目標を設定しそれを追い求める形になると思いますが、今は世の中の変化が大きくて、当初に立てた目標が市況や環境の変化で変わってくることが沢山あります。だから新しいものを生み出す時に、プロジェクトはひとつの手段としてとらえています。もっと簡単に言うと、あの手この手で色々とやっていかないと目標に到達できません。新しいプロジェクトをやり続ける事によって、はじめて成功することが出来るということです。これが新しいことにチャレンジし続ける理由です。

 

日本PMO協会:

なるほどですね。あるべき状態である目的に近づくために、数多くのプロジェクトを複数、同時並行でやられているのですね。細目にプロジェクトを設定し、それを多動していくようなイメージですね。

 

井上氏:

まさにそうです。目標よりも目的に重きを置いて、小回りの利くプロジェクトを同時に沢山やるという事が、今の時代に合っているのかもしれないですね。あとはプロジェクトの目標を市況や環境の変化でチューニングしていく事も重要だと考えています。

 

日本PMO協会:

そうですね。いわゆるチェンジマネジメント、変更管理の部分ですね。

井上さんの場合は、目標設定をしたら即行動されますよね。その時の計画はどのようにされているのでしょうか?

 

井上氏:

計画は必ず立てます。そもそもの計画がない状態でスタートすると、後から問題になるケースが多いので。ただ、計画の作成に長く時間をかけることはしません。重視しているのは「シナリオ」です。「こうなったらこうなるだろう」みたいなシナリオを3パターンぐらい持っておくようにしています。

例えばコンティンジェンシー計画にあるような、AパターンでダメならBパターン、BパターンでダメならCパターンみたいな形で用意しておきます。あとはフェーズごとに、それをしっかりと見直すという事ですね。

 

日本PMO協会:

お仕事だと、それらの計画をアウトプットとして社内やお客様などに提出されると思うのですが、プライベートでのプロジェクトなどではどのように計画をアウトプットされているのでしょうか。

 

井上氏:

手帳に夢や目的などを明確に記載し、手帳に計画をしっかりと書き込みます。さらに、この手帳を1年に1回とか定期的に計画を見直しています。これをやると面白くて、見直ししている時に変わっているところと変わっていない所があります。変わっている夢や目的は手段、変わっていないものは本当の夢や目的だと思っています。

 

チャンピオンとプロジェクトマネジメント

井上 裕介

日本PMO協会:

井上さんは「MuayThaiOpenフェザー級王座」というチャンピオンであり、またプロジェクトマネジメントの国際資格であるPMP®でもあります。プロジェクトマネジメントがチャンピオンとして役に立っている事をぜひ教えてください。

 

井上氏:

一番分かりやすいのは体重を落とす時ですね。あれはまさしくプロジェクトマネジメントです。マイルストーンを立てて、いついつまでに何Kgなどを設定し、それを達成させるためにこういう活動をするみたいなことになります。私はエクセルで記録して、しっかりと管理しています。過去の計画と実績がすべてデータとなっていて、現在の進捗と過去を見比べながらより精度の高い減量をしています。データが自分の状態を裏付けてくれるので、感覚に頼ることでのオーバーワークや、減量失敗ということが起きにくくなります。試合当日の高いパフォーマンスに繋がっていると思います。

 

日本PMO協会:

過去のデータはプロジェクトマネジメントで言うと「教訓」になるのですね。

 

井上氏:

まさにそうですね。このようなプロジェクトマネジメントの考え方を知らない格闘家も多いと思うので、是非取り入れていただくことをオススメしたいですね。

 

日本PMO協会:

井上さんは努力してチャンピオンになられたと思います。減量以外に目標設定や計画をされていた事はありますでしょうか?

 

井上氏:

実は、チャンピオンになりたいと強く思っていたわけではなく、次の一試合を勝つことを目標にしていました。勝利の積み重ねがタイトルになると思っていました。19戦目でチャンピオンになったので、遅い方かもしれませんが、チャンピオンになる事は目標でも目的でもなく、やはり強くなる事、キックボクシングを通して自分を成長させる事が本当の目的でベルトというのは一つの結果であったと思っています。ただ、先日手帳を見直すと「チャンピオンになる」と書いたのを見つけました。どこかのフェーズで成果物の一部と考えていたことはあったようで、何事も記録しておくことは大切だと改めて思いました。

 

日本PMO協会:

そうすると、先ほどのお話しとリンクしていて、強くなりたい、自分を成長させたいという目的があって、それを実現させる一つの目標が「次の一戦」、そしてそれの積み重ねをされてきたという事なんですね。それを成し遂げて、結果としてチャンピオンになられたという事なんですね。

 

井上氏:

そうですね。そういう意識が強いですね。ベルトにチャレンジできるタイミングは何回も来るものではないので、1回で取れて良かったです。

 

日本PMO協会:

相手の事を分析されて、どう戦略的に勝利するかも考えられるのでしょうか?

 

井上氏:

はい。その通りですね。先ほどの話と同じで、3パターンぐらいシナリオを用意しておいて、対応します。そのパターンを増やしたり、実行精度を上げたりするために日々のトレーニングがあります。

日本PMO協会:

減量もそうだし、試合までのトレーニングもそうだし、さらに試合中もシナリオや計画があるという事なんですね。

 

井上氏:

相手がいる事なので、すべてが思うようにはいかないです。。日々の鍛錬とはよく言ったものですが、トレーニングの時に目標を意識することが試合本番でのパフォーマンスに大きく影響します。

 

日本PMO協会の会員、有資格者へのメッセージ

日本PMO協会:

日本PMO協会の有資格者、会員の方、読者の方にメッセージをいただけますでしょうか。

 

井上氏:

プロジェクトマネジメントは、多くの人が、当たり前のようにやっている事であり、誰しも人生で一度は経験しているはずです。その精度や、成果でその後の人生が大きく変わります。プロジェクトマネジメントを学ぶ事は、その人生の大切な武器を、より細かく、深く、戦略的に成功させる事を学ぶ事だと思っています。プロジェクトマネジメントは役立ちやすい学問のひとつだと思っています。言葉がちょっと難しかったりしますが、やってみると非常に面白く、自分の人生と重ね合わせる事があると思います。そういうのを愉しみながら手に取ってもらえるとよいのではないでしょうか。

 

編集後記:「目的」に近づくための「目標」

今回のインタビューで強く感じたのは「目的」と「目標」の違いです。

目的とは、「あるべき状態」であり、数値やモノで表しにくいものになります。

その目的を達成するために、目標を設定し、それを達成し、目的に近づいていきます。

目標達成に有効な知識と技術がプロジェクトマネジメントです。

井上氏は目的が明確にあり、その達成に向けて、様々な目標を設定され達成されていました。

プロジェクトマネジメントの知識や技術は、仕事やプライベートでも活用可能です。

皆様のさらなるキャリアアップ、スキルアップを祈念しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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