(写真左)カードシステム部 カード計画プロジェクト マネージャー 井奥 誠 様 / (写真右)一般社団法人日本PMO協会 会長 理事
●同時多発的に発生するプロジェクトの管理標準化
株式会社JR東日本情報システムのカードシステム部(以下、同部)は、グループ会社のクレジットカードシステムに関する開発業務を受託している。
カードシステムは複数のサブシステムで構成されており、受託する開発案件も様々なものが同時多発的にプロジェクト化されている。
この複雑なプロジェクト受託環境の中で、これまで同部は限られたリソースの中で、依頼される個々のプロジェクトに対して、立ち上げや計画に関する調整を個別に行っていた。
この個別の調整においては、クライアントの組織や担当者と一からプロジェクト管理要件などを膝を突き合わせて調整し、構築していく必要があった。
その結果、プロジェクト立上げや計画の工数が増加し、プロジェクト実行までのスピードに課題が生じていた。
そこで、同部のPMO活動の一環として、過去の様々なプロジェクト管理情報や経験を基に、クレジットカードシステムの開発案件における工程、リスク、品質、課題、試験、移行、開発業務など、幅広い領域においてプロジェクト管理のガイドラインを策定し、標準化した。
そして、その標準化された手法によるプロジェクト管理について、クライアント側のすべての関連部署と合意を得た。
「カードシステム部」の皆様
●標準化による「効率化」の実現
同部におけるあらゆるプロジェクト管理基準およびそれに基づく計画書類が標準化されたことにより、これまで個別のプロジェクトの要求事項に合わせて策定していた基準や計画書の調整工数が削減され、効率化が実現された。
また、この効率化により、プロジェクトの実行までのプロセスが迅速化され、クライアントにとっても大きなメリットをもたらした。
●標準化によるプロジェクト管理「品質」の安定化を実現
プロジェクト管理における標準化は、効率化だけでなく、プロジェクト管理の品質安定化にも寄与している。
これまでクライアントごとの個別の要求事項に応じて設計していた各種管理基準や計画書類が統一されたことで、プロジェクト管理基準の品質が一貫し、どの案件でも同じ品質水準で対応できるようになった。
●PMO活動の価値や成果
同部のこれらのPMO活動により、各開発案件におけるプロジェクト立ち上げや計画に係る工数を削減し、工期の短縮を実現している。
また、標準化によりプロジェクト管理の品質も高く保たれており、サービスイン後に大きな障害を発生させることなく、システムのユーザーであるお客様に安全・安心を提供し、大きな価値をもたらしている。
●PMOによるプロジェクトガイドラインの策定の価値
プロジェクトの管理手法や計画書、ツール類のばらつきによって、プロジェクト管理の品質にばらつきが生じることに課題を感じている組織は少なくない。
これらの課題に対して、全社型PMO組織が過去のプロジェクト実績や教訓を分析し、標準化した上で、自社・自組織に最適なプロジェクトガイドラインを整備し、組織に組み入れていく活動は、PMOの極めて重要な価値である。
また、その運用が適正に行われているかをチェックするPMOのガバナンスに関する活動も見られる。
このPMO活動は、PMOエキスパートの活動として、発注者側・受注者側のいずれのPMOにおいても参考となり、さらに、クライアントに対する活動や社内に対する活動のいずれにおいても、重要なインサイトを提供するものである。
●PMOによる「合意形成」の価値
PMOがプロジェクトマネジメントの標準化やガイドラインを策定したとしても、ステークホルダーとの間で「合意形成」がなされていなければ、これらは遵守されず、結果として課題解決にはつながらない。
同部が受託するシステム開発は、グループ会社のさまざまな関連部署や担当者から依頼されるものであり、すべてのプロジェクト管理基準や計画を標準化するためには、グループ会社内の各担当部署や担当者との調整、そして合意形成が必要である。
このガイドライン策定におけるPMOのリーダーシップと推進力は、特筆すべきものである。
本ケースは社外(クライアント)とのプロジェクトガイドライン整備に関するものであるが、社内のプロジェクトガイドライン整備においても、当然ながら組織内での合意形成が重要である。
そのためには、PMO組織としてのリーダーシップや推進力が不可欠であるというインサイトを提供する、価値ある情報であった。
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